陰陽の底から

社会不適合者のお気持ちブログ、たまに映画レビュー

【レビュー】ハリーポッターと陰キャの男性

99年生まれの自分にとって「ハリーポッター」というシリーズは長年謎だった。

死の秘宝公開時点で自分は中学生、当然周囲ではシリーズのネタが溢れていた。

 

しかし、当時の自分は全くと言っていいほど興味がなかった。

ウルトラマンや怪獣が登場するSF特撮にどっぷりだった小学生時代から

中学では仮面ライダー劇画漫画にハマり、高校時代から頻繁に

映画を観るようになっていくが基本的に人が暴力を振るったり人が死んだり

宇宙で冒険したり未確認生命体や殺人鬼に襲われたりする様な

セックス&バイオレンス/スリラー/SFの荒唐無稽な世界に耽溺していた。

そして専門時代ではティーンエイジャー特有の情緒不安定さでそれにより

拍車をかけていき今に至る感じだった。

 

当然SNSでも所謂「映画好き」界隈じみた事をしてはいたが、そこから

伝わってくるハリーポッターのイメージは何となく

・いじめられっ子だと思っていた主人公が実は選ばれし者だった!

・秘められた力と才能で高校生活から一発逆転!

・おもしろ(限られた人間に都合のいい)魔法の世界もあるよ!

みたいな、雑で申し訳ないけど本当にそう思っていた。

そして自分はそもそも「学校もの」というジャンルが苦手だ

フルメタルジャケットとか処刑教室(1982)みたいな「学校」

という機関の持つ恐ろしさや歪さを描いた作品は別だがそれ以外の

「楽しい学校生活!すべてが最高!人生のすべて!」みたいなノリが厭だ。

そうじゃないだろ、学校はただの通過点だし人生は残念ながら続く。

世界は開けているし、未来はあると言ってほしい。見せてほしい...

 

..じゃあわざわざ見なくていいかなぁ!多分合ってない!俺に!

 

そんな感じで映画シリーズ公開とともに成長した

「直撃世代」であるにも関わらず20年以上無視していた。

というのが自分とハリーポッターシリーズとの距離感と前提だ。

ここで一度休憩を挟もう

 

youtu.be

 

そんな自分だったが人の勧めで決心して一気に見てみることにした。

だからこれ以降書かれている文章はすべて

「門外漢のボンクラ陰キャオタクによる感想文」という認識で

読んでほしい、ファンの母数がでかい映画について書くには

前置きが必要なのでそれだけは断っておきたい。

 

 

 

 

それでは、シリーズを二週間ぐらいかけて見た感想を書こうと思う

【理屈より雰囲気重視の世界】

ハリーくんは意地悪な義家族に囲まれてつらい暮らしを送っている...

様な感じではあるが先ほどの偏見であったように

・いじめられっ子だと思っていた主人公が実は選ばれし者だった!

これの選らばれし具合がすごい、一作目に関してはラスボスとの

戦いが「あっ!その件は彼が生まれる前に全部話ついてるんで!」

みたいな感じで全部終わった、これにはかなりびっくりした。

ハリーくん自身が能動的に努力し先に進んでいる感じがまるでしない...

しかし高校一年目はだれでも受動的なのかもしれない、仕方ないか。

そう思ったらハリーくんの周りの大人はほぼすべて彼の略歴を事前に知ってて

全員が全員協力的なのだ、これにもかなり面食らった。

 

しかしここで自分はハリーくんの気持ちを汲んでみた

生まれた瞬間から抗えない運命の一部とされていた人間だと認識すれば

彼のつらさはわからないにしろ、彼が大変だという事実はわかる。

そんな感じで見ようと思ってシリーズを見進めていった。

その結果、ハリーくんよりもサブキャラに目が向く様になった。

それと同時にこの作品は細かいディテールやSF的な視点で見るよりも

限定的な世界でのキャラ同士の関係や成長に目を向けたほうが

楽しめる雰囲気やノリ重視の世界観なんだと思った。

 

【意外と感じの悪い世界観】

これは割と良かった、脇役達が誰もかれも協力的ではなく

感じの悪いキャラが割と多いのがなんだかリアルだと感じた。

この項目で言うのもアレかもしれないがハリーポッターシリーズの

魅力は個人的に『フワッフワな世界観と異常にリアルな人物描写』

なのではないかと思う、自分はそれに魅せられていた。

 

【”終わっている”世代の物語である部分】

スネイプとリリー/ジェームズとの確執やヴォルデモート卿との因縁

これらの重要な部分の描写はもっと尺を割いてほしかったが

それを後から知ってそれに対処せざるを得ないハリーくんたち、

そして現実においても伝説的な事件や出来事は過去にもう起こっていて

それを後追いして、それを踏まえて活動するしかできない世代の観客への

物語としてこのシリーズは良くできていたと思う。

 

youtu.be

 

人生で一番泣いた映画がこれの自分としてはそういうことなんじゃないかな...

と思ったりした。

 

 

【妙に食い足りない/観客に余地を残した世界観】

本筋の説明がつく程度には世界観が作られているが個人的にもっと

物事の一つ一つに呪文があったり使われている素材や

魔法界特有の行事や催事の描写をもっと見せてほしかった。しかし

上記のように「見せてほしかった」と感じるのは観客が

能動的に鑑賞し自分で足りない部分を考えるといった

能動的な楽しみ方ができるという部分ですごく強いと思った。

人気が出るのも納得だなぁ!と距離のあるコメントを送りたい。

 

【残りの好きな所、雑感】

・ハリーくんが全然最強じゃない

・当時のヒロインの新境地、ハーマイオニー

陰キャ界のスーパースター、スネイプ先生

・思わず真似したくなるパイセン、セドリック・ディゴリー

クレイル先生、ハグリッドとかの不完全な人への優しさ

・ヤンキー根性が抜けないヤバおじシリウス

・軽いノリで始めたらヤバかった...感のあるマルフォイ家

 

など要所要所でおっ!っとなる部分は多くあり楽しかった。

大人げなく突っ込みを入れれば無限にあるシリーズだが

自分と同世代にこういったシリーズがあったことはすごく嬉しいし

杖を自作するぐらいには気に入ったと思う。

 

 

あとは紛いなりにも「学校の職員」になり自分のことを

「先生」と呼ぶ人間がいる自分にとっては二通りの見方ができたのも

すごく楽しかった!

食わず嫌いしていたフランチャイズを消化するのも意外と悪くないと

思えたかもしれない、またこういう機会があれば何か書く。